インビザラインは、歯並びや噛み合わせを改善する矯正治療の一つです。

しかし、インビザラインでは歯を削る処置を行うケースがあります。

インビザラインでの歯並び矯正を考えている方のなかには、

「健康な歯を削る理由は?」

「削らずにインビザラインができるかどうかを知りたい」

とお考えの方もいるでしょう。

そこで、今回は以下の内容について解説します。

  • インビザライン治療における歯の削合(ディスキング)とは
  • なぜインビザライン治療で歯を削るのか?
  • ディスキング(IPR)のメリットとデメリット
  • ディスキング(IPR)後のケアと注意点
  • 患者さんからのよくある質問と回答

この記事を読むことで、インビザラインで歯を削る理由を知り、不安なく矯正治療に臨めるようになります。

インビザラインで美しい歯並びを手に入れたい方は、ぜひ参考にしてください。

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インビザライン治療における歯の削合(ディスキング)とは

ディスキング(IPR;Interproximal enamel reduction)とは、ヤスリやディスクなどの専用の器具を使用して行う、歯を削る処置のことです。

虫歯治療とは異なり、歯の側面を片側0.2~0.3mm程度、両側で計0.5mm程度まで削ります。

エナメル質のみを削る処置であるため、時間はそれほどかからず、痛みを感じることもほとんどありません。

矯正治療にともなうディスキングは保険適用外となり、治療費は全額自己負担です。

ディスキングの費用目安は1回5,000円前後ですが、歯科医院によって費用は異なります。

トータルフィー制度を採用している歯科医院では、そのなかにディスキングの費用が含まれていることもありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

なぜインビザライン治療で歯を削るのか?

インビザライン治療でディスキング(IPR)で歯を削る理由は、次の通りです。

  • 歯を動かすためのスペースを確保するため
  • 歯の大きさや形状のバランスを調整するため
  • ブラックトライアングルを改善するため

それぞれ詳しく解説します。

歯を動かすためのスペースを確保するため

歯並びが悪くなる一因として、もともとのあごの大きさに対して、歯が生えるスペースが足りていないことが挙げられます。

スペース不足の場合、矯正治療前に歯を動かすためのスペースを確保するための処置が優先して行われます。

スペース不足解消のために行われる便宜抜歯は、前から4番目または5番目の健康な歯を抜く処置です。

1本の抜歯につき7~8mmのスペースを作り出せますが、健康な歯を抜くことに抵抗がある場合はディスキング(IPR)が検討されます。

また、スペースがそれほど不足していない場合にも、ディスキング(IPR)が選択肢となります。

歯の大きさや形状のバランスを調整するため

歯の見た目を整えるために、ディスキング(IPR)が行われるケースもあります。

歯の大きさを整え、左右対称になるように歯を削ることで、より美しい歯並びを手に入れられるのです。

ブラックトライアングルを改善するため

ブラックトライアングル(ダークトライアングル)は、歯と歯、歯ぐきの隙間にできる三角形のことです。

口腔内では黒く影のように見えることから、「ブラックトライアングル」と呼ばれています。

加齢や歯周病などによる歯ぐきの退縮、遺伝、外傷などによって生じます。

ブラックトライアングルは放置しておいても問題はありません。

しかし、見た目上気になる場合は、ディスキング(IPR)で形を整え、インビザラインで歯を動かし、隙間をなくすことで改善することができます。

ディスキング(IPR)のメリットとデメリット

ほかの処置と同じように、ディスキング(IPR)にもメリットとデメリットがあります。

それぞれについて解説しますので、チェックしておきましょう。

メリット

ディスキング(IPR)のメリットは次の通りです。

  • 歯並びをより美しくできる
  • 抜歯を避けられる可能性がある
  • 矯正後の後戻り防止につながる
  • 抜歯に比べてリスクが少ない

ディスキング(IPR)により、健康な歯を抜かずに、美しい歯並びを長期間保つことができる可能性が高まるのです。

デメリット

ディスキング(IPR)のデメリットは次の通りです。

  • 健康な歯を削らなければならない
  • スペースの確保には限界がある
  • 処置中に痛みや出血をともなうことがある

ディスキング(IPR)はエナメル質のみを削る処置のため、麻酔を使用しません。

しかし、歯や歯ぐきの状態によっては、処置中に痛みや微量の出血をともなうことがあります。

健康な歯を削ることに抵抗のある方や、処置中の痛み・出血が気になる方は、ほかの選択肢を選ぶことも可能です。

まずは矯正治療を検討している歯科医院に相談してみましょう。

ディスキング(IPR)後のケアと注意点

ディスキング(IPR)を受けた後のケア方法とその注意点は以下の通りです。

  • 処置後の歯磨きやフロスを徹底する
  • フッ素塗布などの虫歯予防を行う
  • 定期検診を受ける

インビザライン前にディスキング(IPR)を受ける場合、処置後のケアが重要になります。

注意点もあわせて詳しくお伝えしますので、確認しておきましょう。

処置後の歯磨きやフロスを徹底する

ディスキング(IPR)で削った部分は、ざらざらした状態になるため、ほかのところよりも汚れが溜まりやすく、虫歯になるリスクが高まります。

ディスキング(IPR)後には歯科医師が削った部分が滑らかになるような処置を施します。

しかし、歯磨きやフロスを徹底して、虫歯や歯周病を予防するに越したことはありません。

ディスキング(IPR)後は、いつもよりホームケアを徹底しましょう。

フッ素塗布などの虫歯予防を行う

歯科医院でのフッ素塗布も、ディスキング(IPR)後の虫歯予防に効果的です。

また、フッ素入りの歯磨き粉をホームケアに取り入れるのも一手です。

なお研磨剤が入った歯磨き粉は歯を傷める原因になるため、避けましょう。

定期検診を受ける

虫歯や歯周病は、早期発見・早期治療が重要になる病気です。

定期的に歯科検診を受け、虫歯や歯周病がないかをチェックしてもらいましょう。

また、歯科医院での専門的なクリーニングもお口の健康のキープには大切なことです。

インビザラインでの矯正が終わったあとも、定期的に歯科検診に通うことをおすすめします。

患者さんからのよくある質問と回答

最後に、ディスキング(IPR)について、患者さんから寄せられる下記質問について回答します。

  • 歯を削るときに痛みはありますか?
  • 歯を削ると虫歯になりやすくなりますか?
  • 削ることで知覚過敏になる可能性はありますか?
  • ディスキングを避ける方法はありますか?

不安なくディスキング(IPR)を受けるためにも、ぜひご確認ください。

歯を削るときに痛みはありますか?

ほとんどの場合、ディスキング(IPR)の処置中に痛みが出ることはありません。

ディスキング(IPR)は、歯の表面にあるエナメル質を0.2~0.3mm程度削る処置であり、痛みを感じる歯の神経に影響を及ぼすものではないためです。

しかし、歯や歯ぐきの状態によっては、痛みや出血をともなう場合があります。

歯を削ると虫歯になりやすくなりますか?

ディスキング(IPR)で削った歯の表面がざらついたままだと、そこに汚れが溜まりやすくなり、虫歯のリスクが高まります。

ディスキング(IPR)後に行う削った部分の表面をなめらかにする処置で、ある程度虫歯のリスクは減らせます。

しかし、ほかの部分よりは虫歯のリスクが高い状態であることに変わりはありません。

丁寧なホームケアやフッ素塗布などの虫歯予防を徹底しましょう。

削ることで知覚過敏になる可能性はありますか?

ディスキング(IPR)で知覚過敏になることはほとんどありません。

ディスキング(IPR)で削るのは、歯の表面のエナメル質のみです。

知覚過敏はエナメル質の下の象牙質が露出することで起こる症状のため、基本的にディスキング(IPR)では起こらないのです。

まれではありますが、歯を削る際に歯がしみるような感覚を覚える患者さんもいらっしゃいます。

もしも処置中にそのような症状を感じたら、すぐに歯科医師にお知らせください。

また、ディスキング(IPR)後に知覚過敏のような症状を感じた場合は、何らかの原因で象牙質が露出してしまっている可能性があります。

知覚過敏は専用の薬剤で症状を和らげることができるため、まずは歯科医師にご相談ください。

ディスキングを避ける方法はありますか?

はい、あります。

スペース不足でディスキング(IPR)を検討している場合は、下記のような代替方法があります。

  • 抜歯(便宜抜歯)
  • あごの拡大
  • 臼歯の移動

あごの拡大は成長期の子どもに適した方法です。

成人では十分なスペースを確保できないケースもありますので、歯科医師とよく検討しましょう。

また、臼歯の移動は全体矯正が必要になることがほとんどです。

部分矯正を検討している場合は、難しいことを覚えておきましょう。

まとめ

インビザラインでの矯正前に、ディスキング(IPR)で歯を削ると、より美しい歯並びを長期間保てる可能性が高まります。

本記事でディスキング(IPR)をする理由や処置後の注意点をおさえ、ぜひ安心して矯正治療に臨んでください。

ディスキング(IPR)で健康な歯を削ることに抵抗がある方は、代替方法を選べる場合もあります。

まずは歯科医師にお口の状態を確認してもらい、最適な方法を提案してもらいましょう。

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はぴねす歯科院長 小西知恵
コラム監修者

はぴねす歯科川西能勢口駅前クリニック 院長 小西知恵

日本歯科大学歯学部卒業後、東京医科歯科大学の摂食機能保存学を専攻。その後、東京都・埼玉県・大阪府の歯科医院に12年勤務し、2015年にはぴねす歯科石橋駅前クリニックに勤務。2020年7月、はぴねす歯科川西能勢口駅前クリニックの院長に就任。

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