インビザライン(マウスピース矯正)とワイヤー矯正は、それぞれ異なる特徴を持つ歯列矯正方法で、併用することで治療の効果がさらに高まるケースがあります。

「インビザラインだけでは効果が感じられない」「ワイヤー矯正だと見た目が気になる」とお悩みの方には、併用によって治療の精度や仕上がりが向上する可能性があります。

そこで、今回は以下の内容について解説します。

  • インビザラインとワイヤー矯正の併用について
  • インビザラインとワイヤー矯正を併用するメリットと適応症例
  • インビザラインとワイヤー矯正の併用治療が向いている人
  • インビザラインとワイヤー矯正を併用する注意点

この記事を読むことで、インビザラインとワイヤー矯正を併用するメリットについて把握し、自分に合った矯正方法を選べるようになります。

ぜひ自分に合った治療法を見つける際のご参考にしてください。

インビザラインとワイヤー矯正の併用について

インビザライン(マウスピース)矯正とワイヤー矯正の併用は、複雑な症例に対応する際に採用される治療法です。

インビザラインだけでは歯の移動が難しい場合や、細かな調整を必要とする場合に、ワイヤー矯正を一時的に取り入れることで、より効果的に治療を進めることができます。

インビザラインで治療を進めながら、特定のタイミングや部位においてワイヤー矯正を併用することで、インビザラインの透明で目立ちにくい特徴を活かしつつ、ワイヤー矯正の強力な力で細かな調整が可能となります。

とくに、歯の位置や角度の微調整が必要な場合には有用な方法です。

インビザラインとワイヤー矯正を併用するメリット

インビザラインとワイヤー矯正を併用することで、次のようなメリットを得られる可能性があります。

  • 幅広い症例に対応可能
  • インビザラインが苦手な歯の動きを補助できる
  • 治療期間の短縮
  • 奥歯の前方倒れの防止

それぞれのメリットについて解説します。

幅広い症例に対応可能

インビザラインだけでは難しいとされる症例に対しても、ワイヤー矯正を組み合わせることで矯正が可能となる場合があります。

重度の出っ歯(上顎前突)や叢生、噛み合わせのズレなどは、インビザライン単独での治療は困難とされています。

ワイヤー矯正で強力な力を加えたり、微調整を行ったりすることで、上記のような複雑な症例にもしっかり対応することができるようになります。

インビザラインが苦手な歯の動きを補助できる

インビザラインは、次のような特定の歯の動きを苦手としています。

  • 奥歯の挺出(歯ぐきから歯を引っ張り出す動き)
  • ねじれて生えた歯の回転

上記のような動きを必要とする場合には、ワイヤー矯正を組み合わせることが効果的とされています。

矯正方法の併用によって、個々の歯の動きをより効率的かつ精密にコントロールすることが可能になり、より理想に近い歯並びを手に入れられる可能性が高まります。

治療期間の短縮

インビザラインとワイヤー矯正の併用により、矯正治療にかかる期間を短縮できる場合があります。

治療の初期段階に、ワイヤー矯正で移動の難しい歯の改善を進めることで、効率良く歯を移動させることができるようになります。

とくに、重度の歯列矯正や3次元的な動きを必要とする場合には効果的です。

最初に歯の大きな移動を行うことで、後続の治療もスムーズに進み、全体的な治療の進行が早くなることも期待できます。

治療期間の短縮は、患者さまの負担軽減にもつながるため、大きなメリットといえるでしょう。

奥歯の前方倒れの防止

矯正治療では、歯を移動させるスペースを確保するために抜歯を行うケースがあります。

抜歯後のスペースに他の歯を移動させる前に、奥歯が前方に倒れてしまうことがあるのですが、この現象はインビザライン単独では防ぎきれません。

そこで、ワイヤー矯正の出番です。

ワイヤー矯正の強力な力によって、奥歯を適切な位置に保ちつつ、抜歯したスペースを適切に閉じることが可能となります。

奥歯の位置が安定するため、治療後の歯並びが整いやすいというメリットもあります。

インビザラインとワイヤー矯正を併用すべき適応症例

インビザラインは、すべての症例に対して勧められるわけではありません。

次のような症例は、インビザラインとワイヤー矯正を併用したほうが効果的だといわれています。

  • 重度の咬合異常が見られる
  • 複雑な歯の移動が必要
  • 歯のねじれが大きい
  • 奥歯の沈み込みが激しい

ご自身の歯並びや噛み合わせが当てはまっていないか、確認してみましょう。

重度の咬合異常が見られる

重度の噛み合わせの異常がある場合、インビザライン単独の治療では十分な効果を発揮するのが難しいことがあります。

とくに、上顎と下顎の歯の位置関係に大きなズレがある場合などは、ワイヤー矯正で強力な力をかけて歯を移動させることで、理想的な噛み合わせに導くことが可能になります。

複雑な歯の移動が必要

ワイヤー矯正は、インビザラインよりも強力な力を歯に加えられるだけでなく、微調整にも向いています。

そのため、歯が大きく傾いて生えている場合など、角度をつけて歯を動かさなければならない場合も、ワイヤー矯正の併用が勧められます。

歯のねじれが大きい

歯のねじれの改善も、インビザライン矯正が苦手とするところです。

ワイヤー矯正で歯を回転させ、ねじれを解消することで、効果的に矯正治療を進めることが可能となります。

奥歯の沈み込みが激しい

奥歯が完全に萌出していない場合など、歯を引き上げる移動が必要な場合も、ワイヤー矯正のほうが適しています。

インビザライン矯正との併用で全体の矯正を進めながら、強い歯で沈み込んだ奥歯を引き上げ、歯並びを美しく整えることができます。

また、ワイヤー矯正は矯正にともなう奥歯の沈み込みや前方倒れを防止する際にも役立ちます。

インビザラインとワイヤー矯正の併用治療が向いている人

インビザラインとワイヤー矯正の併用が向いている人の特徴は、次のとおりです。

  • 歯列不正が重度の人
  • 前歯が大きく前に出ている人
  • 噛み合わせが大きくずれている人
  • できるだけ早く矯正を終わらせたい人
  • 抜歯が必要と診断された人

詳しく解説します。

歯列不正が重度の人

叢生など歯列不正が重度の場合、インビザライン単独では十分に矯正の効果を発揮できないことがあります。

とくに、上下の歯の位置が大きくずれている場合や複雑な動きを必要とするケースでは、ワイヤー矯正を併用することで、より強力に歯を動かし、スムーズに治療を進めることができるでしょう。

前歯が大きく前に出ている人

前歯が大きく前に出ている上顎前突(出っ歯)の場合、前歯を内側に引っ張るための大きな力が必要になります。

インビザラインはワイヤー矯正よりも歯にかける力が弱いため、重度の出っ歯には対応できない場合も。

そこでワイヤー矯正を取り入れることで、強い力をかけて効率良く前歯を後ろに引き込むことができるようになります。

噛み合わせが大きくずれている人

上顎と下顎の歯の噛み合わせが大きくずれている場合も、ワイヤー矯正の併用でスムーズな改善が見込めるケースがあります。

ワイヤー矯正ではインビザラインよりも精密な歯の位置の調整が可能なため、安定した噛み合わせの実現にもつながります。

できるだけ早く矯正を終わらせたい人

治療初期にワイヤー矯正で難しい部分を改善し、その後インビザラインで調整を行っていくことで、治療期間を短縮できる場合があります。

インビザライン・ワイヤー矯正のどちらか単独の矯正治療よりも早く、そして負担を軽減して治療を進めることが可能です。

抜歯が必要と診断された人

歯の移動スペース確保のために抜歯をした場合、抜歯後の奥歯の前方倒れなどが治療の進行を妨げるリスクとなります。

ワイヤー矯正で奥歯の前方倒れを防止し、位置を安定させることで、スムーズに矯正治療を進めることができるでしょう。

インビザラインとワイヤー矯正を併用する注意点

インビザラインとワイヤー矯正を併用する治療には、以下のような注意点があります。

  • 金属アレルギーがある場合は難しい
  • 経験豊富な歯科医院選びが重要
  • 治療費が高くなる可能性がある

詳しく解説します。

金属アレルギーがある場合は難しい

ワイヤー矯正で用いるワイヤーやブラケットには金属が使用されているため、金属アレルギーがある場合は注意が必要です。

金属アレルギーの患者さまに対しては、ワイヤー矯正自体を避けるか、セラミックブラケットや特定の金属を含まないワイヤーを使用したワイヤー矯正が検討されます。

金属アレルギーがある場合は、カウンセリング段階で歯科医院に相談し、適切な治療法を選択することが重要です。

経験豊富な歯科医院選びが重要

インビザラインとワイヤー矯正の併用治療は、経験が豊富な歯科医院での治療が必要です。

2つの矯正方法を併用することで治療が複雑になりやすく、適切な治療計画の立案と正確かつ精密な歯科医師の技術が求められるためです。

歯科医院の実績や症例を確認し、信頼できる歯科医師のもとで治療を進めましょう。

治療費が高くなる可能性がある

インビザラインとワイヤー矯正の併用治療は、単独の矯正治療よりも治療費が高くなる可能性があります。

治療費の目安のほか、支払方法などについても、治療前にしっかり確認しておきましょう。

まとめ

インビザラインとワイヤー矯正の併用で、複雑な症例への対応や、治療効果を高めることが可能になります。

本記事を参考に、ご自身の歯並びや噛み合わせに適した治療法を選びましょう。

野澤修一
コラム監修者

医療法人はぴねす 理事長 野澤修一

福岡歯科大学を卒業後、福岡県・大阪府・兵庫県の歯科医院にて14年間勤務。その後、2014年9月に「はぴねす歯科石橋駅前クリニック(大阪府池田市)」、2018年6月に「緑地公園駅前クリニック(大阪府府中市)」、2020年7月に「川西能勢口駅前クリニック(兵庫県川西市)」、2022年11月に「尼崎駅前クリニック(兵庫県尼崎市)」を開院。現在は医療法人はぴねすの理事長として4医院を運営。

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